本記事では、書籍「ダニエルズのランニング・フォーミュラ」で紹介されているランニングの原理原則から具体的な練習方法までわかりやすく解説していきます。
筆者はマラソン歴10年(ベスト2’44)、100km以上のウルトラマラソンも走っているランナーです。
マラソン初心者の頃はやみくもに走れば強くなると思います。
ただ、我流の練習では頭打ちになってしまったという方は多いのではないでしょうか?
この記事の対象者は、以下の方におすすめします。
- タイムが伸び悩んでいる方
- どうやって練習したらいいかわからない方
- 一人で練習をしていて、それでも強くなりたい方
この本の内容を知れば、毎シーズン頻繁に見ることになります。手元にこの本を置いておくのがおすすめです。
筆者も毎シーズン、この本を参考に練習計画を立てて練習しています。
もうこの本なしのマラソン練習は考えられないです。
ダニエルズのランニング・フォーミュラの内容は?
最高のランニング人生を約束する1冊だ
「ダニエルズのランニング・フォーミュラ」紹介文より
本書のタイトルである「ランニング・フォーミュラ(ランニングの方程式)」とは、「VDOT」理論のことです。
本書の内容は「VDOT」の理論を説明し具体的な練習プログラムに落とし込むことです。
「VDOT」とは、最大酸素摂取量である「VO2max」を1分あたりの数値に変換したものです。
この「VDOT」を使うことでランナーの実力が測れます。
すこし難しいので詳しくはあとで詳しく説明しますね。
この「VDOT」でランナーの実力を決めることで、個々人の実力に沿った練習プログラムが組めるようになります。
練習プログラムには5つの練習方法があります。この練習をどれくらいの速さでやるかをVDOTから計算します。
5つの練習方法は、E,M,T,I,Rペースという単語を使って表現されます。
- Eペース:ジョギング
- Mペース:マラソンのときのペース
- Tペース:閾値走(2,30分で限界がくるペース)
- Iペース:インターバルトレーニング
- Rペース:レペティショントレーニング(決められた距離を全力で走る)
それぞれ、詳細はこちらで解説します。
この記事では、本書の内容を以下のSTEPに分け、理解〜実践までを説明します。
- STEP 1本書の内容と、VDOTを理解する
- STEP 2自分のVDOTを把握する
- STEP 3練習プログラムを決める
=中長期目標を決める
- STEP 4練習に取り組む
STEP 1 : 本書の内容と、VDOTを理解する
- STEP 1本書の内容と、VDOTを理解する
- STEP 2自分のVDOTを把握する
- STEP 3練習プログラムを決める
=中長期目標を決める
- STEP 4練習に取り組む
最初に「ランニングの基本原則」と、「トレーニングの原理」を説明します。
原理・原則の上に「VDOT理論」が構築されるので、まずはこちらを習得しましょう。
その後「VDOT理論」を説明します。
ダニエルズの「ランニング基本原則」10個
あらゆるレベルの選手が、トレーニングで得たものを最大限生かせるように、個々のトレーニング状況を評価、向上させるために利用できる原則を10個ダニエルズは提唱しています。
マラソンに対する考え方の軸になる部分です。
伸びる人の共通点は「考え方がしっかりしている」ことです!
ぜひ繰り返し頭に刻みましょう。
先に大切なところをまとめると以下になります。
- 成長は個人によって異なります。他人との比較ではなく自分の能力に集中しましょう。
- 成長は順調にはいきません。予想外のことを想定した目標設定を行いましょう。
- いい面にフォーカスしましょう。そうすればポジティブでやりがいを持って日々の練習に取り組めます。
- トレーニング以外の食事、睡眠、病気、怪我などにも関心を持ちましょう。
- 選手はそれぞれに固有の能力を持っている
- ポジティブなことに目を向ける
- よいときもあれば、悪い時もある
- 予想外のことに備えトレーニングには柔軟性を持たせる
- 中期目標を設定する
- トレーニングにやりがいを
- 良質の食事と睡眠をとる
- 病気にかかっている時、怪我をしているときはトレーニングをしない
- 慢性的な体の不調があったら医師の診察を受ける
- うまく走れた、いいレースができたというとき、それは決してまぐれではない
ダニエルズの「トレーニングの原理」8つ
ランナーが理解しておくべき、トレーニングが体にどのような影響を及ぼすか?についての原理を8つにまとめたものです。
トレーニングで体が強くなる仕組みをわかっている方はスキップしてください!
原理1 : 刺激に対する反応
あらゆる刺激に対して体は反応します。
心臓の鼓動が早くなり、息は荒くなり、血圧の上昇や血流量の変化など、数え切れない反応があります。
刺激に対して体はうまく適応するので、適応していることに気づかないことが多いです。
日頃から、トレーニングの質・量・環境などに応じてどのように体が反応するかを把握するようにしましょう。
一流であればあるほど、自分の体の反応を理解する解像度が上がります。
例えば筆者の場合、マラソン中は50個くらいの要素をずっと把握していますよ。
原理2 : 特異性
原理1と関連しますが、刺激に対して反応するのは刺激を受けた組織です。
反応には2つの種類があります。
- 急性の反応
- 遅延性の反応
急性の反応は、運動中にすぐ見られる反応です。
例えば心筋を刺激したから心筋が反応して心拍数が速くなるなどです。
遅延性の反応は、刺激を受けた体の部位が、健康な状態なら強化され、次に同じ刺激が来るときに耐性ができる反応です。
ランニングをして心肺機能が向上するなどのことですね。
遅延性の反応は、骨や腱、筋肉など全ての組織でも起きています。
原理3 : 過剰な刺激
原理2によると、刺激が強いほど体は大きく反応し、大きく適応しようとします。
それが過剰な刺激だった場合、逆に弱くなったり故障する場合があります。
刺激は1回限りではなく、累積されます。累積された刺激が過剰な刺激となってしまいます。
では、刺激が遅延性の反応を起こし、体に適応して強化されるのはいつでしょうか?
それは休息中です。
休息で体に蓄積された刺激を取り除くことと同時に体は強化されます。
原理4 : トレーニングに対する反応
同じトレーニングの刺激の効果は時間が経つにつれて弱くなります。
そのため、以下の要素のいづれかを徐々に強化する必要があります。
- 量(1回の練習量)
- 強度(走るスピード)
- 頻度(週何回やる?)
- 休息(インターバルの時間)
4-6週同じ強度でトレーニングを続ければ、練習の負荷を上げていいタイミングです。
原理5 : 個人の限界
トレーニングの効果が常に現れるかというと、限界があります。
ある一定時期の生活環境での限界がある。
例えば、サラリーマンの生活環境だと日中はトレーニングができず疲労が溜まった状態で練習することになります。質が落ちるのでその生活をしている時期成長の限界がきますね。
プロのランナーはそういった制約がないので、より成長ができますよね。
個人の時間は当然限られていますよね。
環境を変えないと強くなれないという原理ですね。
原理6 : 収穫遁減
トレーニングを増やして得られる効果は、年々減っていくという原理です。
初心者の頃はぐんぐん成長していたのに、だんだん成長を感じにくくなるのは当然ですよね。
原理7 : 加速度的な減退
トレーニングがある強度を上回った時に減退(怪我や不調)が起こる確率が大きくなるという原理です。
原理8 : 能力維持の原理
あるレベルの総力を維持するために必要な労力は、初めてそのレベルになるときより簡単という原理です。
これらの原理を理解して、オーバートレーニングのリスクを抑えつつ、効果を最大にすることを意識してくださいね!
VDOTとは?
「VDOT」とは、最大酸素摂取量である「VO2max」を1分あたりの数値に変換したものです。
ランニングをしていると、速度に比例して1分あたりに消費する酸素量が増えていきます。
簡単な例を出すと、歩くより、ジョギングの方が息がきれます。それはより多くの酸素を消費しているからですよね。
でも体力がある人はジョギング程度だと息が切れないと思います。
つまり酸素をたくさん使えるほど、長く速く走れるということです。
「VDOT」が大きい人ほど、力のあるランナーです。
VDOTは簡単に測定できます。ランナーの実力を測る指標として優れている点ですね。
以下の記事に「VDOT表」というものがあります。
これは、1,500mからフルマラソンがどれくらいのタイムの人がどれくらいのVDOTに相当するかを表しています。
例えば5,000mが30分40秒だと、VDOTは30に相当します。
VDOTが30の人がフルマラソンを走ると4時間49分17秒くらいで走れるよという実力を示しています。
このように、VDOTがわかれば、各距離のレースの実力も決まります。
さらにこの本では、VDOTから練習のペースを算出することもできます。
ダニエルズの提唱する練習の種類
Eペース:ジョギング
ジョギングのペースで距離を積む練習です。
VO2maxの59-74%、HRMax(最大心拍数)の65-78%程度で走ることです。
余裕があるため、ランニングフォームを意識して走る練習です。
効果は3つあります。
- 怪我の耐性を作る
- 心肺機能と酸素運搬機能を改善
- 遅筋を強化
Mペース:マラソンのときのペース
実際のレースペースに慣れることを目的に、マラソンペースで走る練習です。
「Eペース→Mペース→Eペース」のセットで練習をします。
効果は、設定したペースで走る自信を高めるというメンタル的なものです。
Tペース:閾値走(2,30分で限界がくるペース)
適度なきつさを伴うペースのことです。2,30分で限界がくるくらいのペースです。
閾値(Threshold)とはなんでしょうか?
血中乳酸濃度が速度が速くなると急に増える箇所があります。その乳酸の閾があるペースがそれくらいなので閾値走と言います。
感覚的には、ジョギングとダッシュの境目があるのがわかるかと思います。その閾の速さがTペースです!
目的は、血中の乳酸を除去する能力を高めることです。効果は、スタミナの向上です。
Iペース:インターバルトレーニング
IペースはVO2maxに近い速度です。
短時間走ってインターバル(休息)を取るのを繰り返すインターバルトレーニングで利用する速度です。
目的は、VO2maxを向上させることです。
Rペース:レペティショントレーニング(短い距離を全力で走る)
短い距離を全力で走るペースです。
目的は、無酸素運動の能力向上、スピードの向上、効率のいい走りを身につけることです。
目的を忘れてがむしゃらに走ることがないようにしましょう。
STEP 2 : 自分のVDOTを把握する
- STEP 1本書の内容と、VDOTを理解する
- STEP 2自分のVDOTを把握する
- STEP 3練習プログラムを決める
=中長期目標を決める
- STEP 4練習に取り組む
以下の記事にVDOT一覧表を記載しています。
3,000mや5,000m走の記録から、現在の自分のVDOTを把握してください。
自分の限界を把握する負荷の高い練習です。
十分に準備運動をした上で行ってくださいね。
しんどいと思いますがファイトです!
STEP 3 : 練習プログラムを決める
- STEP 1本書の内容と、VDOTを理解する
- STEP 2自分のVDOTを把握する
- STEP 3練習プログラムを決める
=中長期目標を決める
- STEP 4練習に取り組む
本書では、6種類の練習プログラムが設定されています。
自分のライフサイクルや、これまでの練習経験からわかった練習の好み、試合までの期日などの都合に合わせて選びましょう。
練習プログラム | 特徴 | 想定ランナー、選ぶポイント |
---|---|---|
初心者 | 1週間に3〜5日のトレーニング | ・ 初心者 ・ベースとなるトレーニング経験がほぼない |
2Q | 1週間に2回のQトレーニング | ・日常的に走ってきた ・きついQトレーニングのために毎週2日割くことができる |
4週間サイクル | 3週目まで週2回のQトレーニング。4週目はEペースのみ | ・毎週2回Qトレーニングを行いたい ・4週に1回は距離を積みたい |
5週間サイクル | 5週間サイクルを時間がある限り繰り返す | ・Tトレーニングを重点的に行い、LやMペースの練習も定期的に行う。 ・RやIも並行して行う ・走行距離の異なるランナーごとに好きな練習を選べる。 |
18週間プログラム | 週間走行距離を基準としたプログラムと、時間を基準としたプログラム | ・距離(または時間)を基準にスケジュールを立てたい。 ・基本的に長い距離を踏んでおり、毎週2回もQトレーニングをしたくない。 |
12週間プログラム | マラソン前のきついプログラム | ・ すでに定期的なトレーニングを積んでおり、12週間で仕上げたい。 |
各練習プログラムの具体的な練習メニューは膨大な表になっているため、本記事には掲載できません。
書籍を購入してご確認ください!
Qトレーニングとは、普段の練習よりも負荷の高いトレーニングで、ポイント練習と呼ばれることもアリます。
しんどい練習なので、疲労が抜けた状態で練習に取り組むなどの生活上の工夫が求められます。
STEP 4 : 練習に取り組む
- STEP 1本書の内容と、VDOTを理解する
- STEP 2自分のVDOTを把握する
- STEP 3練習プログラムを決める
=中長期目標を決める
- STEP 4練習に取り組む
練習プログラムを開始する日は本番のレースからの逆算して立ててください。
あとは淡々と進めるだけですが、STEP 3で選んだ練習プログラムが自分の生活と合っていないと感じたときは練習プログラムを変更することを検討して下さい。
また、VDOTのアップデートは月に1回がおすすめです。その分緊張感を持ってVDOTを測定してみて下さい。z
まとめ:『ダニエルズのランニング・フォーミュラ』の活用に向けて
この記事では、「ダニエルズのランニング・フォーミュラ」の理解と実践方法までを紹介しました。
- STEP 1本書の内容と、VDOTを理解する
- STEP 2自分のVDOTを把握する
- STEP 3練習プログラムを決める
=中長期目標を決める
- STEP 4練習に取り組む
本書では、他にも高所トレーニングやトラックレースの練習プログラム、休養や怪我をしたときのトレーニングも記載されています。
興味を持たれた方は購入を検討して下さいね。
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